VASER脂肪吸引は本当に安全? ーVASER認定医が解説ー

はじめに

VASER脂肪吸引は、「たるみが減る」「ダウンタイムが少ない」といったイメージで語られることが多い一方、「本当に安全なの?」「事故のリスクは?」と不安を感じる方も少なくありません。

本記事では、形成外科専門医として脂肪吸引を多数執刀してきた THE CLINIC 東京院の吉田有希 が、
論文エビデンスと自分の臨床経験をもとに、VASER脂肪吸引の安全性について解説します。

1. VASER脂肪吸引とは何か?

VASER(Vibration Amplification of Sound Energy at Resonance)は、特殊な超音波エネルギー(VASER波)を用いて脂肪細胞を振動させ、「乳化(バラバラにすること)」してから吸引する脂肪吸引法です。

従来の吸引管(カニューレ)でガリガリと機械的に脂肪を削り取る方法(SAL)と比べ、以下の特徴があります[1]。

  • 脂肪の遊離(分離)がスムーズ: 脂肪細胞だけを狙ってバラバラにする。
  • 組織の温存: 血管や神経などの索状物を傷つけにくい。
  • 硬い脂肪への対応: 背中や再手術などの線維化した部位にも対応しやすい。

(図:36,000Hzの超音波が気泡の破裂による衝撃波を生み出し、脂肪を溶かし剥がしとるメカニズム)

2. なぜ「安全」と言われているのか?

2-1. 論文から見るVASERの特徴

VASERに関する基礎・臨床研究では、「周囲組織への損傷が少ない」「出血量が少ない傾向にある」「脂肪細胞の生存率が高い」といったポジティブなデータが多く報告されています。

Zocchiらは、超音波補助脂肪吸引が血管・神経・結合組織を比較的温存しながら脂肪を選択的に破壊できると報告しました[1]。また、Rohrichらの研究では、従来法と比較して脂肪組織の外傷が少ない可能性が示唆されています[2]。

これらが、一般的に「VASERは低侵襲(体の負担が少ない)で安全」と評価される医学的な根拠です。以下に、主要な論文データをまとめた比較表を掲載します。

比較項目VASER(ベイザー)従来の脂肪吸引(SAL)根拠となる論文・報告
周辺組織へのダメージ少ない
(血管・神経を温存)
物理的な損傷が大きいZocchi et al. [1]
Rohrich et al. [2]
出血量少ない傾向比較的多いRohrich et al. [2]
脂肪細胞の生存率
(注入への利用)
高い手技に依存文献報告あり [2]
硬い脂肪・再手術アプローチしやすい
(超音波で遊離させるため)
難易度が高い
安全性従来法と同等
(※適切な手技の場合)
確立されているHoyos [4]
Review [3,5]
特有のリスク熱傷(やけど)凹凸・取り残し等Review [3]

形成外科医としての視点(超音波の特性)

私自身、形成外科医時代に「超音波デブリードマン装置(傷口の洗浄機器)」の保険収載のための研究に関わっていました。その経験からも、超音波というエネルギーは非常に奥深く、正しく使えば「悪いもの(除去したい組織)だけを選択的に狙う」という素晴らしい特性を持っていると実感しています。

低侵襲=絶対安全ではない

ただし重要なのは、“侵襲が低い=リスクがゼロ”ではないという点です。
どれほど機器が優れていても、使い方を誤れば合併症のリスクは高まります。VASERの安全性は、機械そのものより“使う術者”に大きく依存するのが現実です。

3. VASER脂肪吸引の主なリスク・合併症

VASERであっても、脂肪吸引である以上、以下の合併症は起こり得ます。

  • 出血・血腫
  • 感染
  • 漿液腫
  • 皮膚の熱傷
  • 凹凸・左右差
  • 皮膚のたるみ
  • 脂肪塞栓症

VASER特有のリスク:皮膚の熱傷(やけど)

特にVASERにおいて注意すべきなのが、超音波の熱エネルギーによる「皮膚の熱傷(ポートサイトバーン等)」です[3]。 同じ場所に長時間当て続けたり、出力が高すぎたりすると、摩擦熱で皮膚が火傷するリスクがあります。これを防ぐには、専用の保護器具(スキンポート)の使用と、術者の繊細なコントロールが不可欠です。特にVASERでは、熱エネルギーによる皮膚熱傷が特有のリスクとして知られています[3]。

4. 論文が示す「VASERは安全か?」

4-1. 合併症率の報告

Hoyosらの報告では、VASERを用いた高精細ボディコントゥアリングにおいて、重篤な合併症は少なく、安全に施行可能であったとされています[4]。また、レビュー論文でも、適切な手技と設定のもとでは、VASERは従来法と同等の安全性を有するとまとめられています[3,5]。


4-2. エビデンスの限界

一方で、

  • 症例数が多くない
  • ランダム化比較試験が乏しい
  • 術者依存性が高い(上手い人がやれば結果が良いが、そうでなければリスクがある)

といったエビデンスの限界も指摘されています[5]。

つまり、「論文があるから絶対安全」と言い切れるレベルではないのが現状です。
しかし解剖学を熟知した熟練の形成外科医が使えば、論文の数字以上の性能を引き出せる可能性がある、という事でもあります。

5. 専門医、認定医としての私の実体験

私自身、VASER認定医ですし、VASERを用いた脂肪吸引を多数経験してきました。

実感としては、

  • 力を入れずに脂肪吸引ができ、大量吸引やデザイン性の高い吸引がしやすい
  • 硬い脂肪や再手術の吸引でも難なく手術できる
  • 出血が比較的少ない印象

といったメリットを感じます。

私が徹底している「安全対策」

一方で、出力や施術部位のコントロールを慎重に行わないと、局所の熱が上昇し熱傷のリスクが高まるのも事実です。 そのため私は、以下のルールを徹底し、「VASERを使いすぎない(過信しない)」ことを意識しています。

自分の手を信じる: 機械のモニター数値だけでなく、皮膚に手を当てて熱さを常に確認する。
低出力設定(50−70%): 必要以上のパワーをかけない。
必要最小限の照射: 組織へのダメージを抑える。
部位ごとの適応判断: 皮膚が薄い場所等は慎重に行う。

6. VASERを安全に受けるために最も大切なこと

結論として最も重要なのは、機械より「施術者の技術」です。

チェックすべきポイントは:

  • VASERの十分な経験がある医師か
  • 合併症やリスクも説明しているか
  • 麻酔・術後管理体制が整っているか

「VASERだから安全」ではなく、「誰が、どう使うか」が安全性を決めます。


7. VASERが向いている人・向かない人

◎向いていると考えられる方

  • デザイン性を重視したい: くびれ作りや、筋肉の陰影を出したい方。
  • 吸引量が多い: お腹全体や太もも全周など。
  • 脂肪が硬い・線維化している: 背中や上腹部など。
  • 再手術(修正): 過去に脂肪吸引をしたことがある部位。

⚠慎重に考えるべき場合

  • 皮膚が極端に薄い部位: 熱傷のリスク管理がシビアになるため。
  • 少量吸引のみで十分な場合: コストパフォーマンスを考慮する必要がある。
  • 大量脂肪注入のための採取:(※VASERで採取した脂肪も定着率は良好ですが、採取方法には工夫が必要です)

まとめ:VASER脂肪吸引は本当に安全か?

VASER脂肪吸引は、

  • 論文上も従来法と同等、あるいは低侵襲である可能性が示され[1–5]、
  • 私自身の臨床経験でも有用性を実感する機器です。

しかし、

機械を使えば自動的に安全、危険になるわけではありません。

術者の技量・判断・周術期管理こそが、安全性を左右します。「VASERだから安全」ではなく、「誰が、どう使うか」を重視してクリニックを選ぶことが最も重要です。

よくある質問

Q1. 普通の脂肪吸引とVASER、結局どちらが安全ですか?

A. 医学的な論文データでは、VASERは従来法と比べて出血や神経損傷が少なく、安全性は同等以上とされています。ただし、これは「適切な技術を持つ医師が行った場合」に限ります。機械の性能だけでなく、執刀医が解剖学を熟知した専門医であるかどうかが安全性の鍵を握ります。

Q2. VASERなら皮膚はたるみませんか?

A. 「絶対にたるまない」わけではありませんが、医学的には従来法よりも高い皮膚の引き締め効果(タイトニング)があることが報告されています(Nagy et al., 2012)。特に、一度伸びた皮膚を戻したい場合や、大量吸引が必要なケースでは、VASERの熱エネルギーによる収縮作用が有利に働きます。

Q3. VASERは火傷(やけど)のリスクがあると聞きましたが本当ですか?

A. はい、事実です。VASERは超音波の「熱」を利用するため、操作を誤ると皮膚の熱傷(ポートサイトバーン)のリスクがあります。当院ではこれを防ぐため、皮膚を保護する器具(スキンポート)を必ず使用し、認定医が皮膚温度を常に確認しながら慎重に照射を行っています。

※この文章は私見を多く含んでいます。実際の施術にあたっては、担当の医師とよく相談してくださいね。

※VASER®は、SOLTA Medical, Inc.の登録商標であり、
本記事は特定の医療機器や製品を推奨・保証するものではありません。

※本記事内の一部画像は、SOLTA Medical公式サイト
(https://solta.com/)より引用しています。

参考文献

[1] Zocchi ML. Ultrasonic-assisted lipoplasty. Adv Plast Reconstr Surg. 1995;11:197-221.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7581206/

[2] Rohrich RJ, et al. Comparative analysis of in vivo ultrasound-assisted lipoplasty. Plast Reconstr Surg. 2000 May;105(6):2152-8. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10839418/

[3] Ruff PG, et al. Consensus-based Recommendations for Vibration Amplification of Sound Energy at Resonance Ultrasound-assisted Liposuction. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2023 Jul 11;11(7):e5110.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10335824/

[4] Hoyos AE, Millard JA. VASER-assisted high-definition liposculpture. Aesthet Surg J. 2007 Nov-Dec;27(6):594-604.https://academic.oup.com/asj/article/27/6/594/195504

[5] Stephan PJ, et al. Safety Studies in the Field of Liposuction: A Systematic Review. Dermatol Surg. 2019 Feb;45(2):171-182. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30702445/

執筆者

吉田 有希, MD

形成外科専門医/美容外科専門医
THE CLINIC Tokyo / Azabu Body Design Center

専門:脂肪吸引・脂肪注入

日本美容外科学会(JSAPS)、ASPS、ISAPS 会員

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