【専門医が解説】リジュランで有名なポリヌクレオチド(PN)/PDRNの正体とは?エビデンスに基づく美肌再生のメカニズム

近年、SNSやクリニックのメニューで「サーモン注射」や「リジュラン」「リズネ」という言葉を目にする機会が増えました。しかし、その中身がどのような原理で肌に作用するのかまでは詳しく知らない人が多いと思います。

このサーモン注射・リジュランの主成分であるPN/PDRNは、炎症と修復のスイッチに関わる可能性がある生体由来成分として研究されてきました。特にPDRNは、アデノシンA2A受容体を介した抗炎症・血管新生(VEGF)と関連して創傷治癒モデルで検討されています。これらは、炎症を抑えながら血管新生や組織修復を促す「バイオスティミュレーター(生体刺激製剤)」に近い性質を持っています。

美容領域の大規模試験はまだ限定的なため、本記事では主に基礎・前臨床〜一部臨床(創傷・虚血)の論文を中心に解説していきます。

PN/PDRNは何をしている物質?

PN(ポリヌクレオチド)やPDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)の作用機序を理解するには、単なる「栄養補給」ではなく、「細胞へのシグナル伝達」という視点が不可欠です。

1)PNとPDRNはなに?

最近PDRNは化粧品にも含まれていますが、どんなものなのでしょうか?

  • PN(Polynucleotide): 比較的長めのDNA断片。[1]
  • PDRN(Polydeoxyribonucleotide): 比較的短めのDNA断片の混合物。より速やかに受容体へ作用しやすい性質を持ちます。 [1]

    これらは共にサケの生殖細胞から抽出されますが、精製過程や分子量分布によって生体への応答が異なることが示唆されています 。このサケ由来の抽出物質がサーモン注射の名前の由来です。

詳細は不明ですが、サケのDNAは人間のものと酷似していて、サケのDNAの断片→「人間のDNAが壊れている!」という緊急アラームの役割を果たすそうです。

2)アデノシンA2A受容体と“抗炎症・修復”のスイッチ

PDRNの最も主要なメカニズムは、「アデノシンA2A受容体」への作動薬(アゴニスト)としての働きです。
アデノシン受容体は、炎症の制御において中心的な役割を担っていることがわかっています。
PDRNがこの受容体に結合することで、過剰な炎症を抑え、組織の修復プロセスを加速させることが、多くの研究で報告されています [2]。

3)VEGF・血管新生:創傷治癒の大事なプロセス

組織が再生するためには、酸素と栄養を運ぶ血管が不可欠です。
PDRNは、血管内皮増殖因子(VEGF)の産生を促進し、新たな血管を作る(血管新生)プロセスをサポートします。 糖尿病マウスを用いた創傷モデルにおいて、PDRNの投与がVEGFの発現を高め、傷の治りを有意に早めたという確かな研究データが存在します [3]。

4)核酸の材料供給(サルベージ経路)

細胞が分裂・増殖する際、DNAを複製する必要があります。PN/PDRNが分解されてできるヌクレオチドは、細胞がゼロからDNAを作る手間を省く「サルベージ経路」の材料として再利用されます。これにより、エネルギー消費を抑えながら効率的な組織修復を助けると考えられています [1]。

お顔に注射すると、どんな経過をたどるの?

PN/PDRN治療は、注入直後に結果が出る「即効型」ではありません。
生体の組織修復サイクルに依存する治療のため、どうしてもタイムラグが生じてしまう治療になります。

時期状態と予測される反応経過
術後〜3日注射による物理的刺激。腫れ、点状出血、軽度の凹凸。通常の反応です。
1週間〜2週間炎症が鎮静化。PDRNによるA2A受容体刺激が活性化し始める時期。自覚的な変化はまだ少ない時期です。
1ヶ月〜3ヶ月血管新生やコラーゲン、エラスチンの再構築(リモデリング)が進む。評価時期: 肌の質感や厚みに変化を感じ始める方が増えます。
6ヶ月以降組織の安定期。継続判断: 維持療法、追加を検討する時期です。

【注意】 美容目的(しわ・ハリ)における長期エビデンスは、治療創傷(傷跡)や潰瘍治療に比べるとまだ蓄積段階です。1回の注入で劇的な若返りを期待するのではなく、数回にわたって少しずつ改善させる補助治療と捉えるのが一番正しいかと思います [4]。

使い方と限界

現在、美容医療では2種類のアプローチが行われています。

  • 局所注射: 真皮層へダイレクトに届ける手法。最も一般的です。
  • 併用療法: フラクショナルレーザーやニードルRC等との併用。微細な傷を作った後にPNを塗布・導入することで、相乗的な修復効果を狙います。

エビデンスレベルと限界

PDRNの創傷治癒(糖尿病性足潰瘍など)に対する効果については、エビデンスの高い報告がありますが [2], 一方で、「健康な肌をどこまで若返らせるか」という美容目的の指標については、症例報告レベルのものが多く、効果の現れ方には個人差が大きいのが現状です。

このような症状がでたら受診しよう

PN/PDRNは生体適合性が高く、アレルギーリスクも低いとされていますが [1]、注入治療である以上、以下の所見がある場合は速やかに医師の診察を受けてください。

  1. 異常な痛み・色の変化: 注入直後から数時間以内に、激しい痛みや皮膚が白っぽく(あるいは網目状に紫に)なる場合は、血流障害の可能性があります。
  2. 48時間以上続く熱感・赤み: 感染症や過度なアレルギー反応の疑いがあります。
  3. しこりの形成: 稀ですが、注入部位に硬い結節ができる場合があります。

ただし、注入後のわずかな凹凸や赤みに対して、すぐに失敗だと判断して別の処置(溶解剤やステロイド注射など)を急ぐのは危険です。特にステロイドは皮膚ラブルになることが多い薬剤です。PN/PDRNは組織と馴染むまでにある程度の時間を要します。専門の先生に相談し、慎重な経過観察を行いましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. ヒアルロン酸注入と何が違いますか?

A. ヒアルロン酸は「物理的な体積(ボリューム)」を出すのが得意ですが、PN/PDRNは「細胞の活性化と組織修復」を促すのが主目的です。形を変えるのではなく、肌質そのものを底上げしたい場合に向いています。

Q2. サケのアレルギーがあるのですが受けられますか?

A. 原則として、サケや魚類に強いアレルギーがある方は控えるべきです。精製過程でタンパク質は除去されていますが、リスクをゼロとは言い切れません。

Q3. 1回で効果を感じますか?

A. 基礎研究の知見からは、組織のリモデリングには複数回の刺激が有効とされています。一般的には2〜4週間間隔で3回程度の施術を推奨するクリニックが多いですが、肌の状態により異なります。

Q4. 目の下のクマには効きますか?

A. 皮膚が薄い部位への血管新生・厚みの改善が期待されるため、適応となることが多いです。ただし、脂肪の突出(眼窩脂肪)によるクマは手術が第一選択となります。

Q5. 施術後にマッサージは必要ですか?

A. 注入直後の強いマッサージは、製剤の分散を早めすぎたり、内出血を悪化させたりする可能性があるため、担当医の指示がない限りは控えてください。

まとめ

PN/PDRNは、アデノシンA2A受容体やVEGFを介した生体の修復メカニズムを利用した、非常に論理的な治療法です。即時的な変化を求めるのではなく、肌の再生プロセスをサポートするパートナーとして捉えるのが正解です。 もし経過に不安を感じたり、ご自身の肌に適応があるか悩まれたりした際は、お気軽にご相談ください。

参考文献

1.Cintia Marques et al.From Polydeoxyribonucleotides (PDRNs) to Polynucleotides (PNs): Bridging the Gap Between Scientific Definitions, Molecular Insights, and Clinical Applications of Multifunctional Biomolecules.Biomolecules. 2025 Jan 19;15(1):https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39858543/

2.Squadrito F, et al.Pharmacological Activity and Clinical Use of PDRN
 Frontiers in Pharmacology. 2017 Apr 26:8:224.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28491036/

3.Galeano M, et al.
Polydeoxyribonucleotide stimulates angiogenesis and wound healing in the genetically diabetic mouse.Wound Repair Regen. 2008 Mar-Apr;16(2):208-17..https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18318806/

4.Polito F, et al.
Polydeoxyribonucleotide restores blood flow in an experimental model of ischemic skin flaps.J Vasc Surg. 2012.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22051873/

この記事を書いた人

吉田 有希(Yuuki Yoshida) 形成外科専門医 / 美容外科(JSAPS)専門医
THE CLINIC 東京院 / BUST CLINIC / 埼玉医科大学 形成外科・美容外科

【経歴・人物】 日本専門医機構認定形成外科専門医。 現在はTHE CLINIC Tokyoにて、脂肪吸引・脂肪注入を中心としたボディデザイン診療を行う。

医師として臨床現場に立つ傍ら、「医学的に正確で、患者様が理解しやすい医療コンテンツ」の不足に課題を感じ、曖昧なネット情報に惑わされる患者様を減らすため、医学論文(一次情報)に基づいたエビデンスベースの発信を徹底している。

【保有資格・所属学会】

  • 日本専門医機構認定 形成外科専門医
  • 日本美容外科学会(JSAPS)専門医
  • VASER認定医

【専門分野】

  • 形成外科全般
  • 脂肪吸引・脂肪注入(豊胸・エイジングケア)
  • 医療ダイエット・肥満症治療管理
  • 医療論文解説

▶︎無料カウンセリングはこちらから

吉田診察希望の方は、その他欄に「吉田希望」とお書きください。

無料カウンセリング予約|豊胸・脂肪吸引・エイジング治療のTHE CLINIC (ザクリニック)【公式】
THE CLINIC (ザクリニック)のご予約はこちらから。特に脂肪吸引や豊胸手術、美容整形の失敗修正についてお悩みなら、ぜひご相談ください。美容外科医がじっくりとお話を伺い、具体的なご提案をします。
THE CLINIC 予約フォーム

※本記事では、いわゆる「リジュラン」「リズネ」「サーモン注射」などの名称で知られる製剤に関連するポリヌクレオチド(PN)/ポリデオキシリボヌクレオチド(PDRN)という成分の基礎研究を解説しています。
これらは各社の登録商標・製品名であり、本記事は特定製品の効果を保証・推奨するものではありません。

コメント